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2018年02月27日 20:51
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北海道下川町が第1回「ジャパンSDGsアワード」

 

 国連が2030年の達成を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」において、北海道下川町が第1回「ジャパンSDGsアワード」総理大臣賞を受賞しました。国の推進本部(本部長 内閣総理大臣)が2017年度に創設したもので、同町の人口減少緩和や森林バイオマスエネルギーによる地域熱自給率向上など環境未来都市としての取り組みが高く評価されました。

 

 

【住民の80%が中心市街地に居住】   【気温マイナス32度の日の朝】

 

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 地方自治体における人口減少、高齢化の進展は、佐賀県でも同じ問題を共有しています。20市町それぞれに、住民サービス、流入人口の増加策に知恵をしぼっているところです。限られた地域資源をいかに活用して、持続可能な地域社会を創っていくかーという課題に対して、下川町の取り組みが参考になるかもしれません。

県内のSDGsによる市民団体NGOの取り組みは、以前に同ブログで紹介しました。

 

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 下川町は、北海道北部を流れる天塩川の支流名寄川の上流部、上川地方の天塩国上川郡にある町。面積は、東京23区とほぼ同じ644.2km2で、森林が総面積の88%を占める。人口は3,383人(平成28年4月)、65歳以上の高齢者が39.6%を占める。気候は、夏は30度以上、真冬はマイナス30度以下になる。スキージャンプが盛んで、レジェンド葛西 紀明選手など有名選手を輩出。住民の80%が中心市街地に居住しています。

 

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持続可能な地域社会目指す

~森林産業・低炭素化・超高齢化対応~

 

 下川町はSDGsによる「持続可能な地域社会の実現」をめざし、政府から環境未来都市の選定を受け、SDGsのコンセプトである、経済・社会・環境、3領域の統合的解決の観点で「①森林総合産業の構築(経済)」、「②地域エネルギー自給と低炭素化(環境)」、「③超高齢化対応社会創造(社会)」などに取り組んできました。その結果、人口減少緩和や森林バイオマスエネルギーによる地域熱自給率向上などの好傾向を生んでいます。

 現在はSDGsを取込んだ「2030年における持続可能な地域社会ビジョン」を策定中で、ビジョンを基に計画(総合計画、SDGs未来都市計画など)を策定し、具現化のためのプロジェクトを位置付け、多様な主体を巻き込みながら実行していく考えなどが評価されました。

 

 SDGsには自治体・企業間の連携が不可欠

 

 下川町は、「地方自治体からのSDGsへのアプローチ」の表題で取組みの結果をまとめています。それは次の3点で、①「SDGs」は「持続可能な地域社会」を実現するための有効なツール ②この実現は小さな地方自治体単独では困難(全国自治体1720の3分の2が5万人以下の自治体) 地方地域の自治体は“知識・技術・ノウハウ・資金”が不足 ③SDGsを切り口とした企業・団体とのパートナーシップが重要 ―に集約されています 。

 

    

【森林管理等の企業との包括連携】    【日本アロマ環境協会との協定】

 

一の橋集落」の高齢化対応モデル地区

~バイオマスボイラーで暖房・給湯~

 

 超高齢化社会対応では、平成22年に同町の市街地から10キロほど離れた「一の橋集落」集落再生に着手。同集落は1960年には林業にかかわる人を中心に2,000人以上が住んでいたが、安い外材等の影響で平成21年には95人に激減し、高齢化率は51.6%に達しました。同町では同地区をエネルギー自給型の高齢化社会のモデル地区にしようと、集合住宅や熱供給施設(木質バイオマス)、地域食堂の整備など「一の橋バイオビレッジ」として集約化しました。平成28年現在、人口はほぼ変わらないが、木工作家の移住など生産年齢世代が増加し高齢化率は27.6%に下がりました

 集落再生の取組みとして、まず老朽化していた町営住宅を建て替え集住化し、22戸ある集合住宅は断熱性能の高いエコハウスとしました。そこにバイオマスボイラーで暖房や給湯を供給し、安全で安心な生活基盤を整え、さらに余った熱を使って、しいたけの菌床栽培を行う事で雇用も生み出しています。

 また、地域の高齢者は、下川の市街地まで車を運転して買い物に行くのが困難なので、地域おこし協力隊のメンバーが買い物支援のワゴン車を出したり、高齢者の見守り支援をしています。ここでは、バイオマスの取り組みがエネルギー利用だけではなく、町の雇用創出や高齢化対策とも結びついています。東日本大震災後、同町に移住した女性2人もいて、協力隊として経験後、同町でオーガニックハーブを栽培して化粧品に加工する「ソーリー工房」というブランド名で起業しています

 

 

【下川町のコンパクトタウン「一の橋バイオビレッジ」】

 

森林資源を徹底活用

建築資材、バイオマス、アロマオイルー

 

 森林面積が9割を占める下川町では、現在も8社、9工場が製材、加工を手がけ、農林業関係者は町民の1割を越え、雇用の受け皿になっています。町の森林利用法の特徴は、「木材のカスケード利用」。「カスケード」とは連なる小さな滝のことで、原料を一度使用して終わりにするのではなく、形や価値が変わってもそれに合わせて何段階も利用することを意味しています。建築材に使えない木材は、これまでは廃棄されていたが、それを別の形に変え、一本の木を余すところなく徹底的に活用しようというコンセプトです。

 森林資源をエネルギーとして使う、いわゆる「木質バイオマス利用」では、全国的に主流の「発電」だけでなく、下川町では「熱利用」を積極的に推進。同町の木材は、持続可能な森林資源に認められる国際認証の「FSCR森林認証」も受け、環境・社会・経済面で厳しい基準を満たす木材として評価されています。

 森林組合の加工場では、木を円柱に加工し、山の階段や公園用の土木資材にしたり、炭に加工して住宅の床下に敷き、消臭や調湿に活かしています。炭にする際に出る木酢液に木材を浸すことで、建築材を防腐処理する技術も開発しました。一般的に防腐剤には化学薬品が使われて危険なものが多い中、下川町で防腐処理された木材は全国的にもめずらしく安全なものとなっています。

 また、森の手入れで伐った木の葉っぱも有効利用しようと、葉を蒸留してエッセンシャルオイルをつくり、オイル、石けん、化粧品などとして販売する事業を行っています。この事業は現在、「株式会社フプの森」として独立運営しています。カスケード利用の最後が、捨てられていた未利用材まで使い切る、バイオマスのエネルギー利用。まず未利用材をチッパーという重機で薄いチップに加工し、11基あるバイオマスボイラーへと運ぶ。チップが、灯油の替わりに暖房や給湯をまかなう燃料となります。2016年末現在、この仕組みによって下川町では公共施設30カ所に熱を供給し、熱需要の60%を自給しています。これは町にとっては大きな省エネになっています。

 

 地域エネルギーの自給目指す 

ー熱電併給システムの導入ー

 

 また、町は灯油販売業者と相談し、灯油組合がまとまって「下川エネルギー供給協同組合」という組織をつくり、そこがバイオマス燃料の供給事業を担っています。チッパーの機械などは町が整備し、下川エネルギー供給協同組合に貸す形だ。バイオマス燃料の利用で、町は年間で1800万円(2014年実績)ほどの灯油代を削減、浮いた費用は半分をボイラーのメンテナンス費として積み立て、残りの半分を子育て支援に回しています。子育て支援の内訳は、中学生までの医療費を無料にしたり、保育料や給食費を支援しています。地域のエネルギーを地域で使ってコストカットをするだけではなく、削減した分を地域に還元しています。

 「地域エネルギー自給と低炭素化」(環境)の課題に対し、こうした試みの上でも未だ、同町から電気やガス、灯油などで地域の外にエネルギー費用として流れていっているお金が、現在は電力で5.2億円、熱で7.5億円あるとされています。町はこの12.7億円の支出を、将来的に町内のエネルギーでまかないたい考え。その構想のもとに、2019年にはデンマーク大使館などから協力を得て、熱利用と発電を同時に行う熱電併給システムを、市街地に導入する計画になっています。

下川町のSDGsパワーポイント資料

*写真等の資料は、下川町のホームページより

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