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2017年10月27日 13:11
Category:05.県内のイベント・セミナー

ヨーロッパを魅了した有田焼

 

 2017さが国際フェスタ月間講演会『ヨーロッパを魅了した有田焼~パリ万博からウィーン万博へ~』が10月7日、佐賀県国際交流プラザで開かれました。佐賀日仏協会、佐賀県EU協会主催。木本真澄さんの講演に続き、佐賀日仏協会事務局長園田寛氏との対談もあり、参加した聴衆との活発な意見交換も行われました。

 

【会 場】

 木本さんは、有田焼400年事業のポータルサイトArita-Episode2の原稿を執筆。有田で磁器の生産が始まった1610年代から400年余の歴史を振り返った。東京の出版業界で15年間勤務後、平成25年から佐賀在住。佐賀県国際課の非常勤職員。執筆では、磁器産業の発展を支えた先人たちの生き様に大きな魅力を感じ、現在は「百婆仙と深海宋伝(http://korea.sseikatsu.net/pekupason/)」の探究を続けている。

【有田焼の歴史と魅力を語る木本さん】

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 先ず、県立佐賀城本丸歴史館で現在開催中の肥前さが幕末維新博覧会プレ特別展「1867年パリ万博と佐賀藩の挑戦」(11月12日まで)を紹介。佐賀藩は大政奉還で江戸幕府が滅んだ年の1867(慶応3)年に開かれたパリ万博に、フランス皇帝ナポレオン3世の要請を受けた幕府、薩摩藩とともに出品。このとき、出品された有田焼は、高い芸術性と技術力により、ヨーロッパの人々を魅了した。

 平成29年(2017年)は、1867年の第2回パリ万国博覧会の開催から150年を迎える年です。この万博は、日本が初めて正式参加(出展)した万博で、幕府の諸藩への参加要請に対して、前藩主鍋島直正が即決して参加したものです。この時に、日本から参加したのは幕府(日本大君政府)・薩摩藩(薩摩大守政府)・佐賀藩(肥前大守政府)の「3政府」だけでした。

 佐賀藩からは、佐野常民(団長)、藤山文一、小出千之助、野中元右衛門、深川長右衛門の5人が派遣され、イギリス滞在中の石丸虎五郎(安世)、馬渡三郎の2人がパリで合流しました。

 佐賀藩の参加の目的は、「西洋文明の吸収」と「佐賀藩特産品の売込み・プレゼンテーション」で、佐野は蒸気軍艦の購入交渉の特命も受けていました。

 佐賀藩使節団は、陶磁器や白蝋、和紙、茶など佐賀藩領内の特産品を多数出品するとともに、欧米の進んだ技術や制度の吸収に努めました。団長の佐野は、この経験をもとに、明治政府の「博覧会男」として、ウィーン万博(1873年)参加など博覧会・博物館行政をリードしました。また、パリ万博で「赤十字」を視察し、西南戦争(1877年)の際に「博愛社」(後の日本赤十字社)を創設しました。

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 この間、長崎に招聘され、日本の窯業の近代化に尽くしたドイツ人の化学者、ゴットフリート・ワグネル(1831年-1892年)が、佐賀藩に雇われて1870年4月より8月にかけて有田町で窯業の技術指導にあたった。ここでは、石灰を用いた経済的な釉薬の開発、従来使われていた呉須に代わる安価なコバルト顔料の使用、薪不足を解決するための石炭窯の築造実験を行っている。ワグネルはドイツで学んだ化学の知識を基に日本の窯業に深く関わった。有田での窯業指導は上述の通りであり、伊万里焼(有田焼)の近代化に先鞭を付けた。

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【園田氏(左)と木本さん】

 木本さんは、先ず「ナポレオン3世は何故、日本に万博参加を要請したのか」と問う。ナポレオン・ボナパルトの「軍事的覇権」に対し、「文化的覇権」を追い求めた結果だとする。「19世紀万博の歴史は、政治と外交の大舞台である」と語る。「1873年のウィーン万博では、大隈重信や佐野常民ら佐賀藩出身者が大活躍する」。「急ごしらえのパリ万博とは違い、ウィーン万博では、ワグネルのセレクトやアドバイスが奏功し、西洋の先進技術を導入するための礎を築いた。」と結論づけた。

 一方、 佐賀日仏協会の園田氏は「浮世絵は遠近法を無視した画法で、ゴーギャンなどに日本の文化が影響を与えた」。「古九谷も有田の初期のもの、という説が定着している。加賀の人は、なかなか認めようとしませんが」と語る。また、デザイン分野における有田の今日的な課題について、「柿右衛門様式など有田の伝統的な焼き物に対し、中国の模倣した焼き物の区別が(消費レベルでは)難しい」点にも言及した。

 参加した聴衆との質疑応答では、「佐賀に住む人が先ずは、有田焼の歴史を知るところから始めなければ、有田焼の将来的な発展はない」という結論に行きついた。

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 肥前さが幕末維新博覧会は、2018年3月17日~2019年1月14日、佐賀市城内エリアを中心に県内全域で開催される。                 HP:https://www.saga-hizen150.com/

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